心身症について
心身症とは
心身症とは、実は診断名ではなくいわば俗称です。しかし、一般的にはよく汎用されており、こころの葛藤が身体の様々症状として出現したと判断される症状です。様々な検査をしても器質的な異常が見当たらないものの、しびれや痛みなど身体の症状は確実にみられています。よく内科や整形外科などの身体科で、「精神的なもの」といわれることがあります。
診断
心身症を診断名に分類すると様々なものに分かれますが、主なものは下記があります。心身症はすでに述べたように器質的な異常が見られないものですが、診断のポイントはわざと症状を作っているものではないことです。いずれも内的なこころの葛藤が要因で身体症状を呈してことです。(症状を捏造している場合は詐病あるいは虚偽性障害といいます。)
鑑別不能型身体表現性障害(undifferentiated somatoform disorder)
心身症の中で最も多いもので、心的葛藤がもとで何らかの身体的症状を呈するものです。例えば胃の不快感や痛みなどで、心的葛藤に比較して身体反応や訴えの程度が著しく、かつ6か月以上続いているときに診断されます。(6か月未満のときは適応障害と判断されることが多いです。)
転換性障害(conversion disorder)
神経症状として出現する一群です。失声、嚥下困難、けいれんなどの身体症状がこれにあたります。特に痛みとして出現する場合は、疼痛性障害と診断されます。昔は「ヒステリー(Hysterie)」といわれたもので、現在の診断名にあてはめるとこの診断が見合います。
心気症(Hypocondriasis)
「自分は身体の何らかの病気にかかっている、直にかかってしまう」という著しい思い込みがあるものです。
身体醜形障害(body dismorphic disorder)
別名「醜形恐怖」といわれるもので、外見に対して著しく卑下するものです。摂食障害と診断が併記されることもあります。
治療の方向性
薬物療法
考えや感情が汲々としている状態で、不安障害や強迫性障害に則ります。抗うつ薬NaSSAやSSRI、SNRIのほか、三環系抗うつ薬を使います。症状が著しく生活自体がままならない場合は、一部抗精神病薬も加えることがあります。
精神療法
繰り返し述べているように、わざと症状をみせびらかせているわけではありません。むしろ様々な葛藤の中で我慢や忍耐を続けた中で、身体の症状として現れ出たものです。それゆえ身体の症状だけのやりとりだけでは、むしろ遷延化します。生育過程や家庭環境などこれまでの様々な事情により、言葉を介した意志疎通に成功体験が少ないことが背景にあります。
心身症は、考え方が窮屈になっていることによる病気です。手詰まりになっているため、治すというよりも創る方向で進めていきます。環境と周囲を的確に把握し、コミュニケーションの手段や表現方法を増やしていくことで、身体症状として表現する必要性は少なくなっていきます。