こころ、こんにちは。

摂食障害について

摂食障害(Eating Disorder)とは

摂食とは「食べること」に対する様々な心配を抱えている状況です。「食べ物」に対して
ではありません。俗に拒食症や過食症と言われているものです。拒食症にも過食症にも、自己誘発性嘔吐を伴っている場合があります。診断としてはおのおの「神経性無食欲症」および「神経性大食症」が代表的です。

摂食障害の症状と分類

いわゆる「食依存」です。食べることに対する衝動コントロールがうまくいかないことを指しています。食事に対する悩みが前景に立っている症状ですが、あくまで「衝動コントロール障害」ですから、本音は「食べることで頭が一杯になっていたくない」わけであり、ここが治療の根幹になります。

拒食症(神経性無食欲症 / アノレキシア/Anorexia Nervosa)

拒食症は食べ物を受け付けない状態と勘違いされるような診断名ですが、実はそうではありません。拒食症は摂食障害のうち、「標準体重の85%以下」「月経が3回来ていない」という身体的状態を呈していれば、神経性無食欲症という診断となります。(教科書的には他の項目もありますが、これは神経性無食欲症以外の他の摂食障害においてもみられるため、上記の身体項目2つだけが臨床的な判断基準としては特有なものです。)

拒食症にはその名称からイメージしやすい「食事をとりたがらない」ものと、「いったんは食べるけれども、自分で吐く、あるいは下剤を使って食べたものを出そうとする」ものの二つに分かれています。前者を「制限型」、後者を「むちゃ食い/排出型」といい、特にむちゃ食い排出のことはBinge-purgingと呼ばれます。

あくまで、上記の2つの身体的な項目が含まれるときに神経性無食欲症と診断します。身体的に危機感が強いという判断のもと、診断が分けられているわけです。

過食症(神経性大食症/ブリミア/Bulimia Nervosaを含む)

実は診断に「過食症」という言葉はありません。食べることに対する衝動コントロールができないもののうち、上記の2つの身体的項目を含まない場合は、神経性大食症またはその他の摂食障害となります。このうち「3か月以上の間、週2回以上の過食および代償行為(自己誘発性嘔吐、下剤使用が一般的)」に該当するものを、神経性大食症と診断します。これも身体に対する危機感の目安から、ピックアップされた診断名です。

そのほかの摂食障害(Eating Disorder NOS)

臨床的な使い方としては、これまで述べたように身体に対する危機段階によって「神経性無食欲症」および「神経性大食症」を「その他の摂食障害」から特に分類していると述べて構いません。逆に言えば、「神経性無食欲症」および「神経性大食症」という診断となった場合は、こころの治療に加えて身体管理を優先する必要があるということになります。

摂食障害の亜形~本人だけではない摂食障害のかたち

診断ではありませんが、摂食障害には亜型があります。よくあるものは摂食障害の患者さんが一転親を巻き込んで、「自分の代わりに食べろ。そうしなければ私が過食をする」といい、本人の言葉に従って親が無理やり食べさせられている光景を、当の本人が端から見ているという場面です。これは実は「投影性同一視」というこころの防衛機制が表面化しているもので診断としてはつきませんが、問題としては大切なものです。

摂食障害という病気の特徴

摂食障害は、上述のように「食べることに対する衝動コントロール障害」です。衝動コントロール障害のことは依存と言いますので、摂食障害は「食べること依存」と述べた方が本質としてわかりやすいかもしれません。そして依存ですから本人が感じている罪悪感が関与しています。この罪悪感に対する振る舞い方として、摂食障害は他の依存症と比べて特徴的な部分があります。

それは摂食障害という病気は、その行為により加害者と被害者の両方の立場を同時に味わえるという点です。「食べて気持ち悪くなり、そして吐く」という循環は、罪悪感の強い自分自身を罰し、そして同時に罰せられるという立場にもなれます。これはちょうど、リストカット症候群の際のこころ具合と似ています。
もちろん本人にとっていわれのない、知らず知らずのうちに身についてしまったものですが、本人のこころにある自身に対する過剰な罪悪感に対し、自ら罰を与えることでまがいなりにも許されたいという気持ちが沸きあがってきているものです。

摂食障害とのコラボレーション

摂食障害とコラボレーションするものとして、万引き依存があります。診断としては窃盗癖、あるいはクレプトマニア(kleptomania)といいます。

この窃盗癖がなぜ摂食障害とコラボするのでしょうか。上述したように、摂食障害のあるは、罪悪感のある本人に対し加害者と被害者を同時に味わえるということです。しかし摂食障害は身体に影響する疾患ですから、食べ吐きを続けることに限界を感じます。そこで「いわれのない罪悪感」ですがこれを消し去ることが可能な方法を新たに見つけなければなりません。

そこで窃盗癖というやり方が出てきます。窃盗癖は、摂食障害が自身への自罰として満たされなくなった時に多く表れます。いままでは食べ吐きやリストカットで被害者と加害者を同時に味わえてきたのに、身体の限界やこころのバランスがとれなくなる。この時に、「一瞬で罰してくれる相手を世の中に求めたい」と思った時の方法が、「モノを盗む」という行為です。

リストカット症候群も同じように、この過剰な罪悪感がいまの生活を支配しているといっていいでしょう。しかしこの罪悪感は、例えば親や祖父母などご本人の生い立ち上の重要な人物(これを重要他者と呼びます)によって、いわば植えつけられてきた場合が多いです。そういう意味でも、ご本人のこれまでの暮らしが無視できないのです。

摂食障害の治療

神経性無食欲症は身体管理が優先されるため、ハード面の問題からクリニックでは無理に行わないことがあります。この場合は、入院および入院施設のある病院の外来を使います。
神経性大食症またはその他の摂食障害に該当する場合は、この疾患を取り扱うクリニックでの診療が有効です。

薬物治療

衝動コントロールの障害ですから、抗不安薬や気分安定薬が中心となります。こころの状態により、抗うつ薬(SSRI.SNRI含む)や抗精神病薬も使用します。

精神療法・面接

こころの苦しさに対し、ご本人がおぼえた昇華方法が「依存症」ですから、依存対象の症状のやりとりだけにはなりません。何に我慢せざるを得なかったのか、知らないふりをせざるを得なかったのかなどこれまでの葛藤に目を向け、見失っていた本当の私を取り戻す、あるいはいままでとは違う私を得ていくように見つめていきます。

自助グループ

摂食障害にはNABAといわれるものなど、様々な自助グループと言われる定期的な集会があります。必須ではありませんが、その方の暮らしによりコミュニティのひとつとして提案します。

家族のかたへ

摂食障害を含め依存症の治療では、家族も立派な悩みの当事者です。また上述のようにご本人に巻き込まれて汲々としている場合もあります。

また依存症の治療の全般的な流れとして、ご本人よりも実はその周りで悩んでいる家族を見つめていくことで、結果として本人が抱える罪悪感や問題が消えていきます。