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うつ病と神経症の兆候〜何気ない変化を捉える

[2023.02.14]

例えばうつ病という診断は、現在はクリアカットに様々な症状の有無のみで分別されますが、以前は病態像の把握、そして予後と治療を占う上で、少なくとも「内因性うつ病」(endogenous depression)と「神経症性うつ病」(neurotic depression / Neurose / ノイローゼ)の二つの診断名では分けていました。ちなみに神経症性うつ病の代表的な状態像の一つとして、現在は既に消えてしまった神経衰弱状態(neuroasthenic state)いう見方もありました。

その違いを臨床的な場面で大きく言えば、内因性うつ病は物事の起こりが「自分由来」、神経症性うつ病は「周囲由来」と捉えています。よって内因性うつ病は変わらなければならない対象は「自分」と述べて自責感に駆られる一方、神経症性うつ病はその対象は「社会」や「他人」と連想するため、表現は批判や非難となりがちです。

現在はこの二つを公式では分けることはなくなり、「従来診断」として我々年配の医師の間だけで通用するに過ぎないものになっています。これは病気の「起こり」という縦の時間軸を重視する傾向が少なくなってきたのも一因でしょう。

確かに、現在の病態像がどのような影響を受けて出現してきたかは、特に目で見える部分が少ない精神医療の場合は、原因-結果をより特定しきれないからかもしれません。また抗うつ薬の発展により、病態を時間軸などで分析しなくても、現在の症状に処方を「あてがう」ことが出来れば、目先の治療は成り立ってしまうところが以前より多くなってきたからかもしれません。しかしこのような病態解析学や精神病理学といわれる、物事の起こりを縦の流れで把握していくことは必要と考えています。

このような要素の中には、生活史を踏まえて、影響を与えてきた人物像と関係性も含まれることになります。

 

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