メニュー

大人になってからの虐待の影響

[2015.10.01]

最近のコラムでは、虐待を受けながら育った人の様子について触れています。今回は一見わかりにくいものの、「あれっ、この人は虐待に苦しんできたかな」と思われる様子について述べます。

それは物事の決め方にあらわれます。虐待に苦しんできた人は「早く」「一人で」物事を決めたがる傾向が出ます。俗に「折檻」と呼ばれる類の虐待は、親が虐待をしながら同時に子どもに様々な決断を迫っていることが多く、従って子どもは親の言うことを素早くそのまま飲み込まないと虐待が終わりません。また長年虐待を受け続けていると、困ったときには相談するというやり方も体験できません。その結果大人になってからも、つい物事を素早く、かつ一人で決断しがちになります。熟考や合議が必要な場合でも、いま手元にある情報や想像だけで物事をすすめてしまうため、新たな情報を求めに行こうとしません。それゆえ拙い決断だったことに後悔したり、周囲からクレームが起こる事態に繋がったりします。

このように、ふとしたところにも影響が出てくるのが親子虐待です。前出のように「後悔しても気付ける」ならばまだ救いはありますが、気付く機会も得られないまま虐待の影響が出続けている人もいます。

これは例えば、「当たり前じゃない」を口癖に持つ人です。虐待や親の情緒不安定で悩んできた人は、熟考して考える機会を良しとしない傾向にあります。「決断は迅速に」がポリシーで、じっくり考えている人を見るとイライラしてきます。しかしこのような人は、迅速な割にはいつも同じ考え方で、幅がなく、突拍子で、飛躍しすぎています。「どうしてそういうすっ飛んだ考え方になるの?」と言われます。そして考え方がいつも同じであると、やがてどうしても無理が出てくるため、自分も相手もおさめようとして出てくる言葉、これが「当たり前でしょ」です。これが高じると、「感情的な人」と言われます。

このように虐待の影響が残っている人は、得てして拙速傾向です。その場で決めないと叩かれてしまうという子ども時代の名残です。「いまを保留する勇気」を持てず、「唯一無二の正しい考え」を求めたがり、ムキになりやすく、拗ねやすく、周りの意見を許さず、その結果周囲との軋轢やいざこざに繋がっていきます。

虐待の影響を取り払い、幅広く物事を考えていくには、「そうじゃない考え方もあるかもしれない」と考える習慣付けが必要になります。これを改めて手順を追って進めていく方法の一つに、認知行動療法といわれるものがあります。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME