こころ、こんにちは。

COLUMN院長コラム

セリンクロとアルコール依存症

2019.10.03

今年の注目薬

今年になって二つの薬剤が新たに注目されています。一つはアルコール依存症に用いるナルメフェン(製品名・セリンクロ)、もう一つは注意欠陥多動性障害に用いるグアンファシン(製品名・インチュニブ)です。
前者は飲酒量低減薬として今年3月に発売されました。現在では大きく広がりましたが、川崎市で発売当初より処方できたのはアルコール依存症専門医と認めて頂いた私だけだったようです。このセリンクロ、これまでの処方では私のアルコール依存症治療スタイルには合っているようです。

不本意を抱えながら飲んでいるのが依存症

私は依存症とは火山の爆発みたいなもので、手数が少ないからこそ、一つの噴火口に集約した結果が依存症だと考えています。もちろん摂食障害やリストカット、薬物、虐待など、様々なものを回しているクロスアディクションの例もありますが、それでも「確実に楽になる」「まがいなりにも思った通りに導ける」とイメージできる方法が少ないから、集約してしまうのが依存症対象です。
よって私の外来ではあまりアルコール行動の話は出てこないと思います。もちろんその話題になればお聞きしますが、基本的には鬱憤や振り返りです。そこには必ずと言っていいほどこれまでの人間関係が加味されています。

セリンクロでつながることにより、振り返りに入りやすい。

今日は薬の話ですが、セリンクロは飲酒の1-2時間前に服薬して、次第に飲酒量を下げていくという触れ込みの薬です。これまでと大きく異なるところは、従来のように断酒していないという人が堂々と来ます。よってある意味酒を飲んでいる自身を振り返りながらの話になります。
これまでは、断酒の後に「そもそも私はなぜこれだけ酒を使わなければならなかったのだろう」と遡及をするのが一般的でした。よって、少なからず酒を飲まないという下駄を預けてもらうことがあり、依存症患者さんにとってはこれが正直プレッシャーでした。

なぜなら依存症になるまでに飲酒するということは、身の回りの様々な出来事や感情を我慢するために酒を飲んでいます。それなのに「まず断酒」と始まったのでは、我慢の厚塗りにすぎません。またそもそも依存症にならざるを得ない背景には、「周囲が勧めたことを信じてやってみたら裏切られた」という伏線を多数抱えています。
その方にとって少ない成功体験を繰り返す中で、「まがいなりにも「しのいでいる」のが依存症なのです。
インチュニブの可能性については次のコラムでお示しします。