こころ、こんにちは。

COLUMN院長コラム

親に翻弄された親たち(前半)

2018.09.03

実家帰省の憂うつ

今年も夏休みで実家に帰省に行かれた人も多いと思います。一方、この時期外来の話題で多くなるのは「帰省」にまつわるものです。配偶者(特に夫方)の実家への帰省は妻側にとっては気が重いものですが、もっぱら外来で取り上げられるのはむしろ自分の実家に帰省する場合です。

第一段階「もんだもんだ病」

例えば「地方に住む母親と、都会に住む娘」の事例では次のようなケースがよくあります。まず8月上旬までにお盆の帰省を促す連絡が入り、まずここでいつもながら娘側が憂鬱になります。ここで母親は娘が帰省しなければならなくなる理由を比較的簡単に出せます。「孫の顔を見たい」「お父さんも会いたがっている」「お墓参りがある」「いつまで会えるかわからないから」などなど…。この中で母親が娘に提示しないのは「私が会いたい」と本音です。私情は伏せて、「そうするもんだ」という流れを娘に想起させようとしてきます。
これは若い頃から世間の風潮に押され、様々なことに挑戦することが出来ず、妥協を繰り返してきた母親に出てきます。加えてこと地方 (田舎といったほうがいいでしょう) は「風習」を守ることを問われます。しかしよくよく考えてみれば個人の気持ちの問題で、実益は発生しません。それにもかかわらず、必須行動の盾にしてくる傾向があります。このような上の世代からの「~しないわけにはいかない」「~はするもんだ」という断定形を、私は「もんだもんだ病」と講義などでも話しています。
このような伝統は、地方の親にとって有利です。親自身の淋しさを解消したくて「会いたい」のに、その欲望を表沙汰にすることなく、「先祖」の存在を盾にできる機会です。
そして娘がこのような「もんだもんだ病」の誘惑に負け、嫌々ながら帰省します。しかし自己肯定感が少ない、ぶれる親とのふれあいには、次に手のひら返しが待っています。

第二段階「おびき寄せておいて、叩く」

親としては無事お盆の娘の帰省を実現させます。渋々帰ってきた娘ですが、まず間違いなく帰省直後は大歓迎を受けます。娘はそこで「あれ、もしかしたら今年はいさかいにならないかな」と期待するかもしれません。しかし問題は、お墓参りや孫を携えての親戚訪問など、いわゆるルーチンが終わってからです。
そのあと母親の娘に対する「もんだもんだ」が始まります。ここはもう帰省の建前とは違って明らかに「母親のわがまま」なのですが、これも今度は「娘なのだから」という雰囲気から押してきます。そしてここで娘が母親の想いにこたえられないとなると、途端に機嫌が悪くなり、ともすれば「あんたなんか帰ってこなければよかった」なんて言い出します。この時の母親の勢いや拗ね方は得てして強烈ですので、娘の心に「またか」「仕方ない」という想いがこみ上げ、渋々母親の機嫌に従うか、父親など他の家族がとりもってその場を時間で収めるということになります。
ここで肝に銘じて頂きたいのは、「こうなったら母親は一歩も譲らない」ということです。

(後半に続く)