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トラウマ・サバイバーの癖

[2013.09.01]

「トラウマ・サバイバー」という言葉があります。幼い頃より両親より様々な虐待を受けた、あるいは両親の虐待を目撃せざるを得なかったなど、家庭内で緊張感の絶えない中で育った子どもとして使われるものです。このような体験はその子供が大人になるにつれて様々なこころの不調を呈する礎になっています。

このトラウマ・サバイバーには共通して大きな二つの癖があります。ひとつは「自分で決める」癖です。本来私たちが大人として生きていく際には、自分一人で可能なことと出来ないことを分別し、出来ないことは周囲と相談したり援助を受けたりして行うことに抵抗がありませんが、トラウマ・サバイバーの大人たちは、適切に相談するというやり方を体感していないため、自分一人でこなすことは困難なことでも、たった一人でこなそうとする癖が出てきがちです。

もう一つの癖は「早く決める」癖です。トラウマ・サバイバーの子供の家庭は、いま穏やかだと思っても次の瞬間にどの様な事件が勃発するか想定できないため、いわば常に臨戦態勢のような雰囲気の家庭で育っています。よって、何が起こってもいいように瞬時に物事を決定していくことが生きていくうえで何より大切であることを身体で学んでいます。そのため大人になっても、ある意味臨機応変に対応はするのですが敏感すぎるため、現実に起こりにくい事柄に不安になったり、またたとえ事が起こっても影響度の少ないものを過剰に心配しつづけるようになります。小さいことが大きくなるのではないかと考えて無視できないのです。よってその結果、周囲との感度の違いから意図していないコミュニケーションの軋轢につながったり、あるいは過剰に疲れてしまうことにつながります。

このように「ひとりで、早く決めなくてはならない」という思い込みがトラウマ・サバイバーと言われる方に共通の癖です。幼い頃から「一寸先の目の前の人の変化が怖い、信じられない」という体感をしてきたわけですから、いまはこの二つの癖がどうしても出てしまうことをある意味やむを得ないことです。このような生き方の癖に対して、これからはいま起こっていることに対して「保留する勇気」を持てるようになることが大きな課題になります。そのためにこれまでの過去を見つめ直し、「どうしてもこころが反応してしまう」部分を丁寧に紐解いていくことが初めの一歩となります。

なおこの「過去の紐解き」を、またいつもの癖で「ひとりで」やることのないようにお願いします。

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