統合失調症について
統合失調症(Schizophrenia)とは
統合失調症とは以前は精神分裂病といわれたもので、昔は早発性痴呆とも表現されていました。幻聴や様々な妄想、思考形式の障害、身体感覚の異常、独語、奇異行動、疎通の障害、欲動の低下、無関心など様々な症状を呈する疾患で、原因は様々なドーパミン仮説などが称されていますが、はっきりとはまだわかっていません。
統合失調症の症状
統合失調症には、大きく分けて陽性症状と陰性症状の二つに分けられています。陽性症状とは周囲に対して大きく訴えかける表し方をする症状、反対に陰性症状は周囲とのやりとりが少なくなる方向の症状を指します。
陽性症状
幻聴
幻覚のひとつで、もっとも多いものです。我々は皆無意識のうちに様々なことを考えており、その中で優先される事柄のみ意識として認識し、そのほかの事柄は意識にものぼられないまま忘れてしまっているといわれています。この病気はこの「無意識の中での忘却」ができず、様々なものが意識上にのぼってきているのではないかという考え方があります。さらにこの病気は、「自分と他人の境界がわからなくなる(自我障害)」という大きな特徴があります。これら二つの要素によって、「実は自分が考えていることが、他人から言われているように聞こえてきていると感じる」のではないかと言われています。これが外から見ていると幻聴と判断されます。幻聴は幻覚の一種ですが、統合失調症の場合は幻視が出現する割合は比較的少ないです。
妄想
幻聴と並んでみられるのが様々な妄想です。「近所の人から嫌がらせをされる」「すれ違った人が私の悪口を言っていた」などの被害妄想のほかに、「アナウンサーが私に語りかけている」(関係妄想)、「誰かに見張られている」(注察妄想)、「誰かに追われている」(追跡妄想)、「自分は偉い、神様だ」(誇大妄想)、「私は浮気をされている」(嫉妬妄想)、「食べ物に毒が入っている」(被毒妄想) などがあります。いずれも幻聴と同じで、自分と他人の境界が不明瞭であることにより生じていると考えられています。
思考形式の障害
上述の自我障害により、自分の考えに様々な影響が出ていると訴える症状です。例として、自分の考えが「他人に伝わっている」(考想伝播)、「他人に知られている」・「テレパシーができている」(考想察知)、「他人に抜き取られてしまう」(考想奪取)などがあります。
陰性症状
無為・自閉
本人の自然な欲動・意志がみえず、自分の殻の中に閉じこもったようにみえる状態です。時に「ひとりでぶつぶつ意味不明なことをつぶやいている」(独語)がみられます。独語は口の動きとして表れなくとも、のどが動いている場合があります。無為・自閉にみえても本人の中では様々な考えが渦巻いていたり、あるいは「なにもするな、するとただじゃおかないぞ」という幻聴が聞こえていて緊張している場合があるため、何もしないからと言って無碍に促すと急に怒り出す場合もあります。
常同思考
考えが動かず、いつまでも同じ話をしたり、または同じことをずっと繰り返し手いる様子を指します。
この他の主な症状
思考や感情に一貫性がないため、話している内容がどんどんずれていってしまったり(連合弛緩)、また話がバラバラになって意味が理解できなくなる(思考滅裂)ことがあります。
このように、様々な理解不能な思考や言動が見られるのが統合失調症の全体像です。
統合失調症の治療
薬物療法
主剤は抗精神病薬です。脳の主な神経伝達物質の一つであるドーパミンが過剰にあることが原因と考えられており、実際にこれらの抗精神病薬はいずれもこのドーパミン放出を抑える作用があります。他に気分安定薬、睡眠薬、抗不安薬などを適宜組み合わせます。
社会支援の利用
地域の作業所を初めとした様々な社会生活援助施設を利用していきます。この病気は経過とともにひきこもりがちとなる傾向があるため、急性期を脱した段階で暮らしの安定を目指して社会支援をつなげていきます。
家族支援
統合失調症の家族会があります。家族の支援の状態により症状が変化することもわかってきており、勉強会や支援の意味があります。症状を増悪させるような、過干渉な状態をHi-EEといいます。