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人間関係・家族関係の悩み

人付き合いの悩みと、その回復の流れ・その1

1. 人間関係の責任は、個人ではない。

「人付き合い」-- すなわち対人関係問題は、当院の根幹である「創る」治療の主軸です。よく「自分は内気な性格だから」とか、「あの人はあのような性格だから…」などと言いますが、大切なことは「性格や人格は自分一人で出来上がるものではない」ということです。むしろこれらの要素は「その人が、それまでに、どのような人と、どのように関わってきたか」…つまり周囲から受けた影響によるところが大きいのです。対人関係に関わる能力は、到底個人で出来上がる割合はとても低いものです。

2.人間関係を車の運転に例える。

人付き合いのクセは、いわば「車の運転」になぞらえることができます。例えば、「直進車が怖くて右折ができない」というドライバーがいたとしましょう。交差点での右折は、直進車との距離を測り、その間を縫って右折をするわけですが、「右折が怖い」という人は、この「他の車との間」に自信が持てないことが多いのです。そのため交差点でたじろいで後続の右折車からクラクションを鳴らされるという体験を繰り返しているうちに、どうしても交差点を右方向に曲がる必要がある時は、目的の交差点をいったん通り越し、その後三度の「左折」を繰り返して元の交差点に戻ってくることで、やっと目的の道に進むというルートをとることにもなりうるのです。

右折が怖い人はこのように手間はかかるわけですが、一応目的の方向に行けないわけではありません。しかし一度の右折で済むところを三度左折する運転を毎回繰り返していると、運転する本人も疲れ、同乗者も気が気でなくなります。またいつもこのような運転を見る機会のある周囲の車にとっては、このような細々とした運転を不思議に思い、何かあるかもしれないと注意を払うようになるでしょう。あるいは置いていこうということになるかもしれません。

これが人間関係ではないでしょうか。道路に故障車自体はほとんど走っていないのです。しかしそれよりも滑らかに運転ができない車、あるいは無理に力が入っている車、クセのある運転をする車がいることでギクシャクが生じていると思われます。

3. 本人だけで人間関係のクセが作られることはない。「トラウマの影響」

しかしこのようなクセのある車に対して、「運転するくせに右折ができないなんて・・・」と簡単には済ませないのが人間関係の治療です。なぜなら右折ができない人は、これまでの何らかの体験や事情により、右折への「怖さ」があるからです。「交差点で右折しようとしたら、何か怖いことが起きる」というイメージをそれまでの体験から膨らませてしまっているのです。その体験は本人も納得可能な単独な事故ではなく、想定外の暴走車 (人間関係に戻せば例えば暴力を振るう人) に遭遇したなど、他人が絡んだアクシデント体験を考慮していく必要があります。

しかし交差点のその場で黙ってたじろぐわけにもいかず、せめて周囲に迷惑をかけないような運転とは何かと当事者は考えていきます。その例えの一つが、上述の「三度の左折運転」です。

つまり当事者も現在可能な方法の中で、懸命にこなそうとしています。よってこれらのような心の状態を考慮しながら、次の展開を開いていくことが治療となります。

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